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無茶苦茶な納期や仕事内容で「成長させてやっている」と思っていた会社について思うこと

こんにちは、さおり(@iropon30)です。

今日は制作会社にいた頃のむかしばなしを。よくWeb制作都市伝説で「金曜日の夜に発注、月曜日までによろしく!」という話を聞いたことがありませんか?実はこれ、都市伝説ではなく私も体験したことがある事実なんです。

というか、誰でも一度は体験している気がします。金曜もありますが深夜12時過ぎに「これ、明日の午前中までに…。」みたいなこともあったりしますね。今はもうないですが、懐かしい思い出です。

ただ、現状このような無茶苦茶なスケジュール、結果出るの?と疑いたくなるような制作はまだ業界内で見聞きしたりします。今日はこの無茶苦茶な制作について思うこと、その時の自分におくりたい言葉を書いていきます。

目次

どんな発注なのか?

一例をあげます。Aというサイトを月曜日までに完成して顧客確認を行い、公開しないといけません。スケジュールの後ろ倒しはできません。
PCデザインはOKをいただき、あとはコーディングだけ。…と思いたいですが、レスポンシブ対応の契約ですが、スマホ用のデザインはありません。

コーディングも高度なものではなく、SEO対策などはしなくていい。むしろきちんとコーディングするよりも、画像をそのまま書き出してくれたほうが良いと思われるものです。そして、Illustratorで納品。

この発注が完成予定の3日前、金曜日の夜に来ました。しかも続けて8件も。もうどうにでもなれと思いながら、土日しこしこと作業をするのでしょう。私は会社員で、裁量労働制。受け入れるしかないのです。

裁量労働制

私が働いていた会社は「裁量労働制」でした。

裁量労働制は労働者に「時間の裁量」はありますが、「仕事量の裁量」はありません。

「時間について」は裁量があるという裁量労働制ですが、業務内容や仕事量については裁量がありません。例えば莫大な量の仕事を「好きな時間にやっていいよ」という裁量なのです。量を減らしてくれとも言いにくい環境が「時間単価が低額な長時間労働」を生んでいました。

…と裁量労働制についてどうあるべきなのか?を考えて検索していたら、下記の記事が裁量労働制について必要なことをまとめてくださっていたので紹介します。

財経新聞
「裁量労働制」に必要なのは“時間”よりも“仕事量”の裁量:小笠原 隆夫 | 財経新聞 ある新聞で、雇用に関する専門家が「裁量労働制」についてコメントしている記事がありました。

私のいた会社の状況とギリギリ発注の理由

私がいた会社は営業会社のグループ会社的な立ち位置の制作会社でした。そして地方ではあるあるですが、Web制作の担当者が入社当時私だけでした。ディレクターやデザイナーはいるけれども「Web」を専門にしている人がいませんでした。

(紙モノ出身の)ディレクターさんがWebのディレクションをする。特にWebの勉強せず、知識もないまま、他のサイトを参考にしたり今までの紙モノの進め方でWebをすすめていく。そんな状況でした。
(今改めて考えると、本当に地獄のような場所だなぁと。WebにはWebのお作法があるし、ある程度課題解決力はあるからWebも同じようにすればできると、上司は思っていたのだろうなぁ。)

さてWebを専門にしていない上司(ディレクター)から、冒頭話したような発注がきました。どうしましょうと考える時間もなく、やるしかないわけで。ちなみに上司もたくさん仕事を抱えているので、社内に対する発注は「後回し」になっているんですね。これが金曜日に発注される理由です。

この「後回し」「あいつならやってくれる」という状況がまずいと思っていました。もし仮に、私がインフルエンザになったら(パソコン持って帰って仕事しそう…(笑))、急に家族に何かあったら?と考えて、怖くなり意見したことがあります。

業務の真っ只中のときは言えませんでしたが、慰労会や面談のときに涙ながらに話したことがあります。忙しいのは重々承知だけれども、もしものときのことを考えてほしいと。しかし、私の言い方や伝え方が悪かったのでしょう。改善されることはありませんでした。

改善ポイントもあったかもしれないが、許さぬ業務量

今のように余裕があれば、もっとよりよい組織にするためにどうすれば?と考えたり、一緒に勉強したりもできたかもしれませんが、当時は忙しい(という理由で逃げてはだめですが)ため、そのまま発注を受け入れ、実装しまた次の仕事へ…という感じでした。

仕事には常に本気だけれど、稼働率は80%くらいのほうがいい仕事ができると考えたのはこの経験からだと思います。

成長できると勘違いしている

さあ、冒頭に話した発注内容で成長できるでしょうか。

「ここの部分はこんな風にコーディングしてみては?」ということも許されない。レスポンシブ用のデザインも納品されたIllustratorデータをスマホ用によしなに組み替える作業。そしてそれを画像書き出し。たまに納品データがInDesignもあったなぁ。今思い返しても辛い。

ストレス耐性や間に合わせる絶対に!という気持ちの面では成長できるかもしれませんが、技術としては全くと言っていいほど成長ポイントが見当たらない仕事だと思っています。

けれどもWebのことをそんなに知らない上司は「スキルとしてもこれだけの量があれば成長できるし、スピード・ストレス耐性としても良い」という目でみていました。何度か面談の際に「成長できない仕事であること」を上司の仕事に置き換えて説明したり、意見したのですが、私の力不足で相手に伝えることができませんでした。

この仕事は1年間に数回コンスタントにくるので、意見するタイミングや改善ポイントは何度かありましたが、私に変えるほどの力はありませんでした。

余談:給料は変わらないが、追う粗利があった話

話が横道にそれますが、私がいた会社はひとりひとり追う粗利がありました。上記の発注にも粗利がつきます。
デザインがPCのみで、それをコーディング(と呼んで良いのだろうか…)すると、10,000円と仮定しましょう。デザインがPC・スマホ対応で、それをコーディングするとスマホ用のデザイン3,000円とコーディング費3,000円が上乗せされ、16,000円になったとしましょう。

このときのスマホ用のデザインの粗利はディレクター上司についていたのが、何だかなぁと思っていたのをここで発散しておきます。スマホ用にリデザインしていたのは私なのになぁ。言い出せなかった私が悪いのだけれど。

少し時間がたって、退職後の話

私は色々あって退職しました。この仕事は後輩へ引き継ぎ、今は後輩の後輩がしているそう。

いつまでこの効果があるのだろうか?という仕事を引き受けているんだ?という謎はありますが、利益のためだから仕方ないのかなとも思います。

ある日、後輩から連絡がありました。相談があるんですけどと話しだした内容は、私が在職中に悩んでいたことと同じでした。

  • ギリギリの発注をやめてほしいことを、どう伝えたら伝わるのか。何度言っても改善されない
  • 成長しない仕事を後輩に渡すのが辛い。成長できない仕事と上司に伝えても、聞き入れてもらえない
  • その成長できない仕事のために、土日や深夜まで仕事をする(してもらう)のがストレスになる
  • 成長できない仕事をしているのに、成長しているだろう!という目で見られる

とってもわかるよ!わかる。目の前に光景が浮かびます。
私も改善できなかったので、どうすればいいのか、どうアドバイスしたらいいのかわかりません。

社外に出て新しい出会いもあったので、この現状を退職後に知り合ったデザイナーさんに相談してみました。

デザイナーさんからの返答は私の心にグサグサくるものばかりでした。

前の会社を思い、その上司に理解して、改善して欲しい思いがあると思いますが、現状の話を聞くと基本的に理解・改善は無理だと思います。

会話コミュニケーションというのは、一定の水準で互いに同じ経験と知識を持っていることが条件ですが、相手にその経験がない以上知識だけ伝えても理解を得られないんですよね。これは多くの会社である事象ですけど、基本的に改善できた会社はありません。(改善できるケースは更に上の上司が、その上司に対して改善を提案した場合のみです。ボトムアップで改善するケースはほぼ無いです)

なので、もしその上司に理解してもらうのであれば、何もしない、何もいわないで周りが辞める事が重要だと思います。

今のように上司の無茶スケジュールに答えていると「なんだかんだ言っても下は対応してくれる」という経験が積み重なっていくだけなので上司にとっては現状を改善する必要が無いんです。

なので、そういう経験を崩すためにも周りはさっさと辞めていく必要があります。俺は間違っていたんだ…という経験をその人物に経験させるのです。そうすれば、その人は経験を積んで改善を行うでしょう。

まぁよく言われることですが、ブラック企業の上司を作るのは実は文句を言いつつも働いてしまう社員なんですよね

この返答を受けて、今後輩たちを苦しめているのは上司だけではなく、私の責任でもあるなと感じました。私がしなきゃ誰がするんだ!という気持ちで日々業務をしていた自分の責任だと。

当時、どうしたらよかったのかを考えてみる

上記のアドバイスをいただき、自分の責任もあると思うと同時に、私は上司に対して自分が置かれた状況でしか話していないなと。上司が周りが辞めずとも改善できるような別提案ができていなかったなと。

対峙しているのがクライアントさんであれば、もっとこうすれば?課題は?別提案は?と深堀りしていくのに、なぜか自社のことは後回しになっていたなというのも反省点です。

当時だと忙しくて考えられなかったかもしれませんが、もし戻ったら「上司の視点から、業務を改善したほうがいい理由」を一緒に考えたいなと思います。

例えば、少し覚えると単純作業ではあるので、マニュアル制作して上司に手を動かしてもらい業務の把握をしてもらうこともできたかもしれません。社内に対しても、相手の視点や相手が思っていなかった視点から意見や改善案を出すようなことをもっとするべきだったのかもしれないと思いました。

まとめ

今思うと、やりがいのない仕事に、どうやりがいを見出すか?ということや、意味があるかわからない仕事をする意味やストレス耐性が得られたことはいい経験になっているかなと思います。

この経験がなければ今の考え方を得られなかったと思うと、数年越しに「あのときの経験は、成長のひとつ」と思えてきた気がします。

現状をつくっているのも、実は自分なんだということを改めて胸に刻んだ話でした。

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この記事を書いた人

インハウスデザイナーとして奮闘している昭和生まれ。日々精進・日々勉強をモットーに、制作人生を謳歌しています。いまはサービスつくってみたい!という衝動に駆られています。

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